東京医大の女子差別

2018年08月10日 07時00分

 江戸時代の商家の下働きといえばまず丁稚(でっち)を思い浮かべる人が多いのでないか。時代劇や落語ではおなじみの存在だろう。10歳くらいで奉公に出て、仕事や読み書きを覚える徒弟制度である

 ▼衣食住は保障されるが給金はもらえない。主人の側に立つと一人前に育ててやるのだからその分ただで働くのは当たり前。親としても食いぶちを減らし、子どもの手に職を付けさせるには奉公に出すのが一番だった。明治以降、児童の福祉増進や近代的商道徳の広まりで丁稚は次第に廃れていくが、当初は「商業が大混乱に陥るため奉公制度は維持すべし」との声も大きかったそうだ。今では考えられない。「昔常識、今非常識」の典型例である

 ▼丁稚の例を思い出したのは、東京医大の一般入試で女子の合格者をなるべく増やさないよう点数操作していた事件があったからである。こちらもやはり時代錯誤の感が否めない。どうやら大学側は「女性の医師が増えると医学会が大混乱に陥る」と考えていたらしい。医療現場は勤務形態が不規則な上に力業が必要な場合も多く、男性医師の安定確保が不可欠。その意味で大学の懸念も故なきことではない。ただ、受験生には公平と見せて、その実ひそかに女子の間口を狭めているのでは差別や背信と批判されても仕方がない

 ▼問題の根は現場の医師が患者や病院に滅私奉公を強いられているところにある。丁稚でもあるまいに。改善するには女性医師を増やしながら男女共が働きやすい環境を整えていくしかない。将来は今の常識も非常識と笑われているだろう。


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