現代の一揆

2017年07月26日 09時11分

 日陰に生きる忍者の目線で江戸期の世相を描いた白土三平の漫画『カムイ伝』を読んでいると、百姓一揆の場面がよく出てくる

 ▼飢饉(ききん)が発生しているのに、藩主はそんな事態にはお構いなしの遊興ざんまい。あろうことか財政が行き詰まると年貢を重くする暴挙に出る。虐げられた人々が怒るのも当然だが、藩主側は徹底した弾圧でそれに応える。漫画とはいえその理不尽さに暗たんたる思いがしたものだ。この人も一部の県民から「殿」の愛称で呼ばれているそうだから、藩主として少なからず気の緩みがあったと非難されてもやむを得まい。秋田県の佐竹敬久知事のことである。大雨のため避難勧告などが相次ぎ、県内が危機的状況にあった22日に他県でゴルフや飲酒を楽しんでいたそうだ

 ▼想定を超える雨量だった上、翌日県庁に向かおうとしたら土砂崩れで道を阻まれる不運もあったことを思えば、『カムイ伝』の藩主と同列に扱うのは気の毒か。ただ、判断に誤りがあったのは隠しようがない。佐竹知事以上に判断を誤っているのが今の国会でないか。九州と東北が続けて記録的大雨に襲われたこの局面で開かれた閉会中審査の中心課題が、特区の一案件にすぎない「加計学園問題」というのである

 ▼のんきなものだ。濁流や土石流、氾濫で苦しむ人々を横目にエアコン完備の国会で空論を戦わせているだけなのだから。年々破壊力を増す大雨災害への対策を根本的に見直す審議こそ最優先するべきだろうに。野党も与党も世論調査で支持率が伸びない。国民の一揆はもう始まっている。


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