米歌手ジョン・デンバーの名曲の一つに「故郷に帰りたい」(和題)がある。オリビア・ニュートン・ジョンが歌って大ヒットした「カントリー・ロード」と言った方がピンとくるかもしれない
▼郷愁を誘うこんな歌詞があった。―故郷へと続く道よ、連れて行ってくれないか、私の心が今も住むあの西バージニアの母なる山に―。働く場所を求めて故郷を離れたのではないか。時間がたっても忘れられないのだろう。思い出に浸るだけでなく、自分の仕事を成し遂げた暁には故郷に帰ってのんびり暮らしたい。そう考える人は少なくないに違いない。故国モンゴルへの愛着の強さを考えると、大相撲の横綱白鵬も似た思いを抱いているのではないか
▼それだけに悩みも深いはずである。日本の国籍を取得すべきか否か。現在の日本相撲協会の規定では、国籍が日本でなければ年寄株が持てない。白鵬は部屋を持って後進を育てたいとの希望があるが、親方になるためにはモンゴル国籍を捨てねばならないのである。先の名古屋場所で幕内最高の優勝39回、通算1050勝の大記録を打ち立てた白鵬も規定には勝てない。国籍規定など古くからあるわけでもなし、固いこと言わなくても、との素人考えも出るがそうもいかないようだ
▼ただ、国技だからというなら既に横綱としてこれだけの成績を収めているし、協会秩序のためというなら柔軟な対応もできる。日本国籍を取得する方向との報も聞こえているが内心は複雑だろう。故郷へと続く道が途絶えてしまうようなものである。はて何か妙案はないものか。