中央省庁の障害者雇用

2018年08月23日 07時00分

 社会貢献と利益を共に高い水準で実現する会社経営は簡単なものではないだろう。元法政大学教授で「人を大切にする経営学会」会長を務める坂本光司氏は長年、それを見事にやり遂げている会社を発掘し、優れた例として発表してきた

 ▼その著書『日本でいちばん大切にしたい会社3』(あさ出版)に、新潟県の印章専門店大谷が紹介されている。1966年から一貫して障害者の雇用に取り組んでいる会社である。会長の大谷勝彦氏には「障害者に働く喜び、働く幸せを提供したい」との理念があるという。障害者の親から「私らは先に死ぬ。子どもだけが心配。仕事をお願いします」と頼まれた大谷会長は「一生面倒見ます」と快諾。その約束を守るため会社を大きくしてきたそうだ

 ▼それに引き換え、何とも嘆かわしい話ではないか。複数の中央省庁が障害者雇用促進法で義務付けられた雇用率を満たすため、人数を大幅に水増ししていたというのである。その数、全省庁合わせ1000人を超えるらしい。今のところ総務、国土交通、経済産業など各省で不正が見つかっているがさらに増えそうだ。昨年の法定雇用率は2.3%で、中央省庁はほぼ達成しているとされていた。ところが水増しを除くと1%に届かない省庁もあるのだとか

 ▼法律の理解不足によるミスで悪質な操作でないとの説明もあるが言い訳だろう。このいいかげんな取り扱いを見ると、省庁に「働く幸せを提供」や「一生面倒見る」といった理念も気概もなかったことは明白。これが「日本でいちばん大切」なはずの行政機関とは。


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