古い体質を引きずった政治や組織を語るとき批判的に使われる「しがらみ」は、もともと悪い意味の言葉ではなかった。川の水流を調節するための木柵のことである。実際、明治時代までは状況の悪化を押しとどめる表現として使われることもあったようだ
▼マイナスイメージが強まったのは平成に入ってから。当時の目に余る自民党の密室・癒着政治を表す言葉として野党やマスコミが盛んに使い出したものらしい。最近で思い出すのは東京大改革を宣言し都知事に就任した小池百合子氏が去年立ち上げた「希望の党」である。「しがらみのない政治」を第一に掲げていた。その後はあの体たらく。小池氏も馬脚を現しつつあるが旧体制に反旗を翻すだけで政治はできないということだろう
▼26日、小樽市の出直し市長選が終わった。こちらもどうやら、3年前に「しがらみのない市政」を引っさげて就任して以来、目立った成果も上げられぬまま混迷を重ねた森井秀明前市長の市政継続は望まれなかったようだ。当選したのは無所属新人で自民党小樽支部などの推薦を受けた元市総務部長の迫俊哉氏。新人ながら地元小樽出身で豊富な行政経験のあることが票につながったと聞く。とすると市政への信頼を取り戻すことが第一の仕事となろう
▼柿本人麻呂に一首がある。「明日香川にしがらみ渡し塞かませば流るる水ものどかにあらまし」。しがらみを上手に使えば荒れた川も静かに流れるようになるものをと歌っている。市長の仕事も同じだろう。市民の声を公平に聴き良い流れをつくることが肝要である。