トリチウム処理水

2018年09月03日 07時00分

 あまたある果物の中で何が好きかと問われて、バナナと答える人は少なくないだろう。俳人高浜虚子もそうだったようで、「川を見るバナナの皮は手より落ち」の句を残している。たゆたう川の流れとおいしいバナナとで、つい無心になってしまったらしい

 ▼健康のためにと毎日1本食べることを欠かさない人もいると聞く。カロリーはさほど高くないのに、栄養が豊富なためだという。なかなか優秀な食べ物である。ところでこのバナナに放射性物質が含まれていると知ると驚く人もいるのでないか。バナナに多く含まれ人体では血圧調整の働きをするカリウムに、微量の放射性物質カリウム40が混ざっているためである。バナナには両者を区別して取り入れる能力がない

 ▼実は植物は皆同じ。つまりカリウムを含む植物には一定量のカリウム40が混ざっているわけ。このため成人男性であれば常に約4000ベクレルの放射性物質を体内に抱えて暮らしている。とはいえこれくらい軽微なら全く心配はいらない。それを思い出したのは先週、経済産業省が福島第1原発のトリチウム処理水について初の公聴会を開いたからである。風評被害に苦しんできた漁業者から海洋放出に反対する意見が多く出たそうだ

 ▼心情は分かるが実際には処理水を1㍑当たり6万ベクレル未満に希釈して放出するため海に出た時点で濃度は1桁台に下がる。人体と比べても値の低さは明らか。それにトリチウムはもともと自然界に遍在する物質である。環境への悪影響はバナナ同様まずない。尊重すべきはその科学的事実だろう。


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