日本は国土の7割以上が山地のため、地震や大雨といった災害で山間の集落などが孤立しやすい。外と結ぶ道路が一本しかない場合が多いからである。肝心の道路が寸断されると人の行き来はおろか、情報さえ満足には伝わらない。ことしも災害が発生するたび、そんな事態が起きている
▼歓迎すべきことではないが、よくある出来事という感覚だろう。ただ、今回のこの孤立には、驚いた人も少なくないのでないか。大阪府の関西国際空港(関空)のことである。台風21号の強風によって流されたタンカーが空港連絡橋を破壊し、命綱の交通路を失った。高潮の影響で滑走路と施設の一部も水に漬かり、一時は利用客や職員ら合わせて約5000人が空港内に閉じ込められたという
▼空港と対岸とを結ぶ全長3750mの連絡橋は航路部分で25mの高さがあり、通常は大型船も楽に通行できる。まさかタンカーが風に流され、よりによって空港にほど近い橋桁の部分にぶつかるなど誰も想像しなかったに違いない。事故が起きた4日はくしくも関空開業25年の節目の日だった。近年は訪日観光客やアジア地域との商取引需用をうまくつかまえ、利用客の伸びに弾みがついていただけに、この空港閉鎖が経済に暗雲をもたらすのは間違いない
▼とはいえ海上に人工島を造成して建設した世界初の空港として全米土木学会の「20世紀を代表する10大事業」に選ばれた関空である。英知を結集して早期復旧を果たし今度はその技術力で世界を驚かせてほしい。それが海上に孤立する空港への信頼を取り戻す近道だろう。