天下分け目の決戦と聞いてまず思い浮かぶのは、関ヶ原の戦いでないか。政権奪取を目指す徳川家康の東軍と、それをはねのけたい豊臣側の石田三成ら西軍が雌雄を決した合戦である
▼結果はご存じの通り。ただ始まる前は三成優位の評も多かったという。その流れが変わったのには幾つか理由があった。一つは後ろ盾となっていた豊臣家が弱気に転じたこと、もう一つは信頼していた味方が敵に寝返ったことである。家康の勢いに恐れをなしてといった側面ももちろんあるが、それだけではなかったらしい。家康は豊臣家臣団が内部で路線対立を起こしていると知り、説得や工作によって仲間割れを誘ったのである。つまり決戦の前から勝負の行方は大方決まっていたわけ
▼こちらの一騎打ちがいまひとつ盛り上がらないのも似た事情があるためかもしれない。安倍晋三首相(党総裁)と石破茂元幹事長の候補者二人による自民党総裁選のことである。20日投開票の前から万歳をするのがどちらかは既に明らかだ。麻生派など多くの派閥が告示前に安倍支持を表明。石破氏で固まるはずだった竹下派は内部で意見が割れ自主投票を余儀なくされた。説得や工作もあったようだが、ここは首相の勢いに乗っておくのが得策との判断だろう
▼両氏は共に経済重視で改憲論者。地方や中小零細への目配りも厚い。政治姿勢にさほどの違いはないのである。10日の論戦も低調だった。となると…。徳川300年とはいかないが安倍政権も長い。大丈夫とは思うがどうか緩みが出ませんように。おっと戦はまだ序盤だった。