今年の日本映画界最大のニュースは「万引き家族」がカンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞したことだと思っていたが、それを上回る事件が起こった。低予算ゾンビ映画「カメラを止めるな!」のロングラン大ヒットだ
▼6月に2館で劇場公開がスタート。絶賛の声が広がり、連日満員が続き、上映劇場は全国で300を超えている。親にも子供にも安心して勧めることができるゾンビ映画は、とても珍しい。大笑いして元気になる上質のファミリー映画でもある。上田慎一郎監督は、これまで短編を中心に制作し札幌国際短編映画祭でも上映されてきた。明日11日から始まる今年の映画祭でも、複数の作品を見ることができる
▼ナショナル・プログラムの中で上映される新作の「正装戦士スーツレンジャー」は、上田監督らしい味付けをしたスーパー戦隊モノのパロディ作品。5人の男女が、スーツ姿で悪の怪人と闘う。特別プログラム「J―COMEDY」では、上田監督と中尾浩之監督の作品が激突。抱腹絶倒の火花を散らす。中尾監督の歴史に残る傑作「ザ・シークレットショウ」は、忘れ物を届けにいく自転車便の悪戦苦闘を描く爆笑ドラマ。要潤が主演している
▼上田監督の「彼女の告白ランキング」は、結婚相手の想像を絶する告白の連続で知らない世界に連れていかれる。2015年製作の「テイク8」では売れない監督が結婚相手に「2年やって何にもならなかったら映画をやめる」と話す場面がある。監督自身の決意でもあっただろう。そして17年「カメラを止めるな!」が誕生した。