不安材料はいろいろ出てきたけれど面倒だから当初の計画通り突っ走ろう、何とかなるさ―。そう考えて物事を進めたはいいが結局失敗して後悔する。そんな経験、どなたにもあるのでないか
▼「急がば回れ」である。日本ばかりでなくギリシャにも「あまり急ぐ者は最後に蹴つまずく」のことわざがあるそうだ。洋の東西を問わず、周りの状況が目に入らずジタバタした揚げ句、しくじる人が多いということだろう。どうやら探査機はやぶさ2には、そんな「蹴つまずく」心配はなさそうだ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が当初今月下旬に実行するはずだった小惑星リュウグウでの着地試料採取を、来年1月以降に延期すると発表したのである
▼想定していた以上に小惑星表面が凸凹で、安全に着地できる平面が見つからなかったのだという。勢いで突っ走らぬ賢明な判断だろう。4年の歳月をかけて地球から約3億㌔離れた目的地に着いたはいいが、慌てて転んで一巻の終わりではあまりにもったいない。はやぶさ2を着地させるに当たりJAXAは直径100mの平地を探したものの、最大でも20mの場所しかなかったそうだ。地獄に例えるのもおかしな話だが、はやぶさ2にしてみれば針の山に足場を探すようなものなのに違いない
▼プロジェクトを統括する津田雄一氏も延期を発表した記者会見で、「平坦な場所が一つもなく、意地悪な小惑星」と語っていた。いずれにせよ針に糸を通すような難しい仕事になりそうだ。この確保した時間で態勢を立て直し、再びはやぶさの奇跡を見せてほしい。