中小企業政策の中核実施機関として各種支援サービスを提供する中小企業基盤整備機構(中小機構)の新作動画が話題と聞き、早速「YouTube」で視聴してみた。題名は「【感情崩壊】今日、部下が会社を辞める」
▼舞台は退職する若手社員の送別会。新たな門出を祝う雰囲気の中で、それまで面倒を見てきた上司が回想する。入社した時から要領が悪く、厳しく指導したこともあったがよく頑張ってくれた―。周りの社員から温かい拍手を送られ話は終わるのかと思いきや、そこからが驚きの展開だった。注意書きに「ネタバレ禁止」とあるため後は実際にご覧いただきたいが、一つヒントを言うとこの会社では若手がどんどん辞めていくのに、上司ら幹部はその深刻な問題に全く気付いていなかったのである
▼この動画を見て身につまされる経営陣も少なくないに違いない。その証拠に、お堅い印象のある中小機構の動画で、今月初めに公開されたばかりにもかかわらず再生数が既に47万回を超えている。動画でも紹介されていた厚生労働省の離職状況調査(2018年)によると、中小企業の新入社員52.4%が3年以内に離職するそうだ。ただでさえ集まらないのに、入ったと思ったらすぐに辞めていくのでは将来計画も立てられない
▼今回の動画はIT化により業務効率化を図り、残業や過重労働をなくそうと訴えたものだった。ただ本当の問題は働き方に対する企業と若者の意識の差だろう。人手不足を頑張りで乗り越える企業にとっての美が、若者の目には醜く映っているかもしれないのだ。