もう10年以上前のことだが、ばかげた話にあぜんとさせられたのを覚えている人も多いのでないか。山口県光市で本村洋さんの妻と子が少年に殺された事件。その少年は差し戻し控訴審で殺害した乳児を押し入れに隠した理由をこう語ったのだった
▼『なぜ君は絶望と闘えたのか』(門田隆将)から引く。「押し入れは何でも願いをかなえてくれる四次元ポケットです。ドラえもんが何とかしてくれると思いました」。この控訴審が始まったのは2007年5月。ところが少年は99年に逮捕されて以来、一度もそんな証言をしていなかった。控訴審のために安田好弘氏を主任弁護人とする新弁護団が結成されてから、いきなり飛び出してきた物語だったのである
▼弁護士という職業に深い疑念を抱かずにはいられなかった。彼らは社会正義を実現するために働いているのではなかったのか。そう信じていたのだが、実は手練手管を駆使し、弁舌巧みに依頼人の罪を軽くさせられればそれで良しとする人種だったのか。そんな不信を助長させる事件がまた起こった。第二東京弁護士会に所属する江口大和弁護士が逮捕されたのである。借りた車で死亡交通事故を起こした男に「車は勝手に持ち出した」とうその供述をさせ、無免許と知った上で車を貸した人物に罪が及ばぬよう仕組んだという
▼専門知識を使い依頼人に法の網をかいくぐらせたわけだ。どうやら弁護士にかかると押し入れも法律もたちどころに四次元ポケットに変わるらしい。まあ実際にはこんな悪徳弁護士などごく一部にすぎない。のだろうか…。