競争は参加者が公平な条件の下で戦えるルールがあるからこそ白熱して面白い。それゆえ特定の者だけが有利にならないようルールは慎重に決める必要がある
▼宮沢賢治の「けだもの運動会」はそれを主題とした童話だ。動物たちが集まって種目を考えているとき、トラが「引き裂き競争がいい」と提案する。王の獅子はこれを不公平と一喝して却下。結局はゾウが提案した「鉄棒ぶら下がり競争」に決まるのである。力の強い者は体が重く、弱い者は軽いため公平だとの理由だった。動物の運動会だから条件も単純だが、これが国の競争となるとそうはいかない。世界経済フォーラムが先週発表した2018年版の「世界競争力報告」では98種類の指標をそれぞれ100段階で評価し、140カ国・地域の順位を決めていた
▼幾つか指標を挙げると、GDPの大きさ、個人貯蓄率、失業率、電化率、起業のしやすさ、インターネット普及率―といった具合。特定の分野に偏らないよう広範な指標が用意されている。さてこの運動会で日本は何位に入ったか。5位である。世界5番目の競争力とは大したもの。ちなみに1位は米国。2位シンガポール、3位ドイツ、4位スイスと続く。経済力と主張がトラ並みに強い中国は28位止まり。「引き裂き競争」だけでは上位に行けないらしい
▼日本が特に優れているのは健康寿命。世界のトップを走る。ICTの導入が3位、インフラの充実が5位と職住環境の良さも目立つ。今の方向性が正しいということだろう。引き続き鍛錬を怠らずこの順位を維持したいものだ。