子どものころは初雪が降ると訳もなくうきうきしたものだったが、そんな生気に満ちた往時の心を忘れて久しい。年々寒さが身にこたえるようになってきたとか、雪かきでぎっくり腰が再発しないかとか、冬の知らせを受けて思うのは今やわびしいことばかりである
▼「雪はげし崩壊しつつあるおれがある」伊藤シンノスケ。崩壊は言い過ぎとはいえ、降る雪が根雪となって諦めがつくまで心はどうにも落ち着かない。その雪に関して、ことしはおまけをもらったようで少し得した気分でいる。去年の札幌の初雪はきょうだったのだ。季節外れの台風21号が寒気を運んできた。札幌管区気象台が観測した去年の本道の初雪初日は旭川と釧路の10月17日。冬の訪れが総じて早かったのである
▼そこへいくとことしは、まだどの地点でも初雪は観測されていない。先の週末もこの時期とは思えない暖かさ。「北風と太陽」ではないが、いつもの散歩道でも上着を脱いで歩いている人を多く見掛けた。暑くなったのだろう。暖かさはしばらく続くらしい。札幌管区気象台が先週発表した20日からの1カ月予報によると、前半はかなり気温が高い見込みという。11月に入ると冬型の気圧配置が現れ平年並みの寒さに戻るそうだ。とするとそのあたりで本道各地から初雪の便りも届いてくるか
▼きょうは暦の上では霜降。そこまで冷え込む心配はなさそうだが、冬は確実に近づいている。「きびきびと小春日和を使いきる」和多田林雨。せっかくおまけにもらった一足早い小春日和。長い冬に備え生気を蓄えるのに使いたい。