先週の月曜日、東日本大震災被災地最大級の防災集団移転事業といわれる「宮城県東松島市野蒜ケ丘」の新しい街を見てきた。ことし2回目の東北・みやぎ復興マラソンに参加した翌日、足を伸ばしてみたのである
▼街開きはちょうど1年前の去年10月。きれいに区画された宅地に真新しい住宅が並ぶ。住民間に断絶が生じないよう塀を設けないルールがあるそうで、だからだろう全体に風通しの良い雰囲気を感じた。今は戸建てと災害復興住宅合わせて448戸に約1000人が暮らしている。高台移転としてはかなりうまくいった例という。案内してくれた仙台の友人に聞くと、移転事業が頓挫するニュースも地元では度々伝えられているとのこと。時間がかかればかかるほど人の心は離れ別の地に流れていくらしい
▼野蒜地区が成功した要因は速さだった。91haの敷地を造成するための土砂排出にベルトコンベヤーを使ったのである。一般的なダンプを使う工法なら数年かかる工事を10カ月で終わらせたのだ。安倍首相はおととい、臨時国会冒頭の所信表明演説で国土強靱(きょうじん)化について「対策を年内に取りまとめ、3年間集中で実施する」と述べた。「誰もが安心して暮らすことができる故郷を創り上げ」るのが目的という
▼ことしは本道も大地震に見舞われ甚大な被害が出た。全国では気象災害が頻発している。南海トラフ地震への備えも怠るわけにはいかない。それらの現実も知った上での所信表明だったろう。復興のためには事業費だけでなくスピードも大切。野蒜の教えを生かしたい。