優れた生産管理システムとして世界に冠たるトヨタ「かんばん方式」は、工場から下請けまで「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」供給することで一切の無駄を省く仕組みである
▼「ジャスト・イン・タイム」と呼ばれるゆえんだが、最初からうまく機能したわけではない。指定された日時ぴったりの納品でないと受け入れてもらえないため、導入してしばらくは工場の前に下請けの長い行列ができたそうだ。かんばん方式で効率化に取り組んだトヨタは容赦ないコスト削減も押し進め、法外ともいえる値下げをたびたび下請けに要求。涙をのんだ業者も多かったと聞く。生殺与奪の権を握る巨大企業に逆らうなどできるわけもなかった
▼それを思い出したのは、時代の最先端を走り洗練されたイメージのIT業界にも同様の問題があると知ったからである。経済産業省などが設置した有識者会議が5日、グーグルやアマゾン、アップルといった巨大IT企業の規制を強化する方向で中間報告案をまとめた。「プラットフォーマー」と呼ばれるそうした巨大IT企業が圧倒的シェアからくる強い立場を利用して、個別企業の小売価格に干渉したり、一方的に手数料を値上げしたりと不当な取引を強いる例があるからだという
▼時代は進み業態が変わっても人の考えることは一緒のようだ。規制の内容は監視組織の創設や情報開示の義務付けが想定されているとのこと。「かんばん」は自分たちだけでなく下請けや取引先など多くの関係者の力で掲げられていることに巨大IT企業も早く気付いた方がいい。