新幹線の洞門

2018年11月13日 07時00分

 険しい崖地の道でたくさんの人が滑落して命を落とすのに心を痛めた一人の禅僧が、発心して岩壁にトンネルをうがつ。大分県中津市の耶馬渓に伝わる「青の洞門」の故事である。小学校の道徳で聞いた話を覚えている人も多いのでないか

 ▼禅僧は托鉢で資金を集め、一人で掘り始める。「そんなことできるはずがない」と最初はばかにしていた周囲も禅僧の真剣な姿に心を動かされ、次第に手伝う人が増えていった。ノミとツチだけを使い岩をうがち続けること30年余り。ついに1764年、洞門は開通したのである。それからは人4文、牛馬8文の通行料を取り工費に充てたらしい。今風に言えばそこでようやく事業黒字化に道筋が付いたということだろう

 ▼JR北海道が先週発表した2017年度の線区別収支状況で、新幹線の赤字が98億円に達していると聞きその故事を思い出した。新幹線もまだ北海道の入り口函館にとどまっている段階。大きな潜在需要は掘り始めたばかりの岩のはるか先で眠っている。つまり札幌までの延伸が実現しないことには、新幹線単独黒字化の絵は描けないわけだ。そもそも政令指定都市20市のうち、新幹線が近傍を通っていないのは札幌市のみ。この国土開発のいびつさが結果として赤字を生んでいるといっても過言ではあるまい

 ▼とはいえ札幌延伸開業は30年度。それまではJR北が国や自治体の協力を得ながらしのいでいくほかない。まさか托鉢で資金を集めるわけにもいかないが魅力あるプランには利用者も喜んで料金を払おう。まずはJR北の真剣な姿を見たい。


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