北方領土交渉新展開

2018年11月16日 07時00分

 幾多の苦難を乗り越えて身に付けた今の実力がもし20歳のころの自分にあれば、人生は全く違ったものになっていただろう―。誰しも一度はそんな夢想をしたことがあるのではないか

 ▼SF小説『ハリー・オーガスト、15回目の人生』(角川文庫)はそれが現実になった男の姿を描く。男は死ぬと元の記憶を持ったまま生まれ変わり、蓄積した知恵と経験で失敗を回避。前の人生でやり残した事業を仕上げるのである。こちらも状況は似ているかもしれない。安倍首相とプーチンロシア大統領が14日、訪問先のシンガポールで首脳会談を行い、1956年の「日ソ共同宣言」を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意した
 ▼共同宣言には平和条約締結後、北方4島のうち歯舞と色丹の2島を引き渡すことが明記されている。森喜朗元首相とプーチン大統領が01年に共同で出した「イルクーツク声明」の時点までようやく戻ってきたようだ。ことここに至るまで日本の政権は何度生まれ変わらねばならなかったか。今回の合意は「4島一括」から「2島先行」へ、政府が大きな方針転換を図ったとする見方もあるがそうではあるまい。歯舞と色丹の返還と同時に平和条約を結び、国後と択捉の帰属についてはそれから話し合うというのがイルクーツクまでの既定路線だったはず

 ▼事態が迷走し始めたのは、01年に誕生した小泉政権がロシア軽視の姿勢をとってからだ。安倍・プーチン合意で北方領土交渉もまた生まれ変わろう。ただ、蓄積してきた知恵と経験は消えない。歴史的な一歩を踏み出せるのでないか。


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