陛下が被災地厚真に

2018年11月19日 07時00分

 人の背中は意外と多くのことを語るものらしい。「子は親の背中を見て育つ」の言葉もあるくらいだ。日本人の精神史に造詣が深い文芸評論家亀井勝一郎氏の随想『大和古寺風物詩』にも、人の後ろ姿について触れたこんな一節があった

 ▼「人間の心は、目や表情にもあらわれるが、後姿にはっきりあらわれることを忘れてはならぬ。人は後姿について全く無意識だ。そして何げなくそこに全自己をあらわすものだ」。東京の赤坂御苑で開かれた平成最後の秋の園遊会。その模様を伝えるニュース映像を見ていたら、雨の降りしきる中、招待された人々と歓談する天皇陛下の右肩がずぶぬれになっていた。一つ傘の下、左に並ぶ皇后さまに雨が当たらないよう気遣っていたのだろう。失礼ながらその格好良い後ろ姿に少々しびれた

 ▼それがつい先日のこと。譲位を来年に控え何かとお忙しいに違いないが、そんな中で今度は先週15日、両陛下は胆振東部地震で大きな被害を受けた厚真町を訪れ、被災者を見舞われた。前日に大きめの余震があり現地入りが心配されたものの、予定の変更はなし。周囲の負担が大きくならないよう新千歳空港からはマイクロバスで移動したという

 ▼皇后さまが熊本地震の被災地を訪れた後に詠んだ歌がある。「ためらひつつさあれども行く傍らに立たむと君のひたに思せば」。陛下は今行って何ができるのかとためらいながらも、人々のそばにとの一心でいつも被災地に向かわれるというのだ。今回親しく懇談した被災者も、どれだけ励まされたことか。平成の後ろ姿は実に優しい。


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