そんな無責任な30年をわれわれは過ごしてきてしまったのか―。この報に触れ、思わずため息をついた人も少なくなかったのでないか。財務省の諮問機関である財政制度等審議会がおととい、平成30年間の財政運営を「極めて厳しい財政状況を後世に押しつけてしまう格好となった」と総括する建議を提出した
▼嫌なことは後回しにして国の借金ばかりを膨らませ、負担だけは孫や子どもに残していくと批判したわけ。事実、本年度末(見込み)の公債残高は1990年度の5倍を超える883兆円。バブル崩壊やリーマンショック、少子高齢化といった諸課題に正面から向き合おうとせず、バラまきを繰り返した結果が現在の状況だという
▼ところで1カ月前に国際通貨基金(IMF)がこんな報告を出していたのをご存じだろうか。負債だけでなく資産も考慮して試算すると、日本の純資産はほぼプラスマイナスゼロ。つまり借金と貯金が同額あるため、今のところ日本の財政状況に心配はないとの分析である。国の財政を正確に把握するには、負債と資産両方を見る必要があるとIMFは説く。借金だけに着目し「後世への押しつけ」と断じた財政審とは対照的である。見方を変えれば平成は後世の人々のために贈り物たる資産を積み上げてきた時代ともいえるのだ
▼「盾の両面を見よ」のことわざもある。一面だけで物事の真の姿は分からない。予算と税収の差を埋める努力は当然としても、消費税率引き上げ前の新年度予算編成時期にこの建議を出してくるとは。財務省の作戦も一面的ではないようだ。