日本有数の大企業「帝国重工」を向こうに回し、技術力で勝負を挑む下町の中小企業「佃製作所」の負けじ魂に共感した人も多かろう。池井戸潤氏の小説『下町ロケット』(小学館)である
▼最近刊行された続編第2部では、GPSを補い測位誤差数センチを実現する準天頂衛星「ヤタガラス」の打ち上げと、それによって可能となる自動農業用ロボットの開発競争を描く。テレビドラマもちょうどその段階に入った。佃製作所の開発理念は「日本の農業を守る」。高齢化や若者離れで担い手不足にあえぐ農家に無人トラクターを導入し、ICTを駆使して作業をほぼ自動にしてしまおうというのである。重労働のない農業は若者の目にも魅力的に映ろう
▼夢のような話だが実は既に始まっている。日本の準天頂衛星「みちびき」が今月から4機体制で運用を開始したのだ。専用の受信機は必要だが、これでいつどこにいても誤差数センチの高精度な測位情報が得られる。ナビ上の車が川を突っ切ることはもうない。ICT施工になじみのある本紙の読者なら、「みちびき」の持つ大きな潜在力に気付いていよう。実際、土木工事で実用化が進んでいる他、過酷な道路除雪に活用する取り組みも始まっている
▼一般道での自動運転に欠かせないインフラとなるのはもちろん、無人航空機(ドローン)を使った新サービス開発や視覚障害者の歩行支援といったプロジェクトも研究されているとのこと。用途はまだまだあろう。中小企業にも可能性は開かれている。佃製作所にも負けぬアイデアをぜひ見つけてほしい。