創成川をまたぐ大東案に
紆余(うよ)曲折を経ての決着だった。道都・札幌の新幹線ホーム位置は2年半に及ぶ議論の末、ことし3月、創成川をまたぐ大東案に決定した。ホーム位置が決まらずに停滞していた駅前再開発が構想づくりに動きだすなど、2030年度の札幌開業に向け新たな玄関口づくりが本格化する。
議論が始まったのは15年。在来線札幌駅に併設する旧認可案に対し、JR北海道で東や西、地下など複数の別案を検討していることが判明。旧認可案を基本にしていた鉄道・運輸機構、道、札幌市を交え、4者協議を始めたが話し合いは難航した。
旧認可案は、在来線や既存交通とのアクセスと建設費、まちづくりとの整合性から、合理的であることは、誰もが認めていた。しかし「拡張性が低い」。これにJR北海道は、異を唱え続けた。
自然など恵まれた資源、急速に進む高齢化と人口減少を考えれば、北海道経済は、観光など交流人口の拡大で消費を伸ばすことが生き残り戦略の柱となる。
30年に札幌市と道が目指す冬季五輪・パラリンピック招致は、世界都市・札幌を知ってもらい、多くの人を招き入れる狙いが根底にある。
「拡張性の低さは、致命的な課題になる」。それは、訪日外国人など急増する観光客で過密状態が続く、現在の在来線駅が象徴していた。
一度は消えた地下案の復活など、議論は二転三転したが2月、JR北海道は、それまでの東案を見直し、新幹線ホームが創成川をまたぐ形で設置する、通称「大東案」を提案した。
在来線との距離があり、アクセス性に課題の残る同案だが、国土交通省が期限を切った3月目前に、JR側の根回しは行き届いていた。地元経済界も、拡張性を支持。鉄道運輸機構や札幌市は、これを受け入れた。
■駅前再開発構想も動きだす
札幌市は7月、新たな新幹線駅を前提とした札幌駅交流拠点のまちづくり計画を立案。周辺の方向性を示し、市有地を含む駅前の北5西1、北5西2街区には国際水準のホテルや高機能なオフィス、にぎわいを創造する商業施設などを想定した第1種再開発の構想づくりに動きだした。
歩調を合わせるように駅周辺から大通地区にかけてビルのリニューアルが目立ち始めた。在来線駅前の北4西3街区では、一体再開発に向け民間地権者間の調整が進み、駅北口の北8西1地区では地上50階の複合ビルを建設する再開発が始動する。
ホームが創成川をまたぐことで北5東1地区の高度利用や再開発が進む創成東地区との連携、投資波及にも期待が高まる。
新幹線の延伸と五輪招致を目標に札幌の街は大きく変わろうとしている。