十勝管内、送電線空き容量が不足
10月に開かれた十勝バイオガス関連事業推進協議会の初会合。顧問の立場で出席した十勝総合局の三井真局長が最後に手を挙げた。「十勝で意欲のある発電計画は全部実現させなければならない」。9月に発生した大規模停電で管内の生命や産業が危機にひんしたことを踏まえた発言だった。
十勝管内では、2013年度に19市町村がバイオマス産業都市の指定を受けて以降、バイオガスプラント新設は順調に推移し、構想策定時は17基だったプラントは33基まで増加。今後、プラント設置を検討している事業は20件以上あるという。
しかしことしに入ってこの流れにストップが掛かる。管内で系統連系できる見通しが立たないことが判明し、各事業者は計画凍結など見直しを迫られた。原因は、道東地方の送電を担う日高幹線などの空き容量がなくなった点。12年の再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)導入により道東でメガソーラーの整備が進み発電容量が大幅に増加したためだった。改善には送電線の増強しか手だてがないが、事業者負担が約580億円、工期が10―15年かかる見通しで、到底、現実的なものではない。
今後、既存設備の有効活用策であるノンファーム型接続の導入で改善する可能性は残されているが、FITの活用を断念し発電規模を縮小して施設内での電力消費にとどめるのが現実的だという意見もある。
しかし天候に左右される太陽光や風力と違い、バイオガス発電は畜産業から発生するふん尿の供給によって電力を安定的に供給できる。十勝にはその資源と技術、そして発電への意欲がある。バイオガス発電で管内の電力需要を支える可能性をみすみす諦めてしまっていいものなのだろうか。(帯広支社・大坂 力)