2019新春対談 高橋はるみ知事 荒木正芳本社社長

2019年01月01日 00時00分

復興加速し活力を 「平成」から新たな時代へ

 地震を乗り越え、世界に開かれた安全・安心で活力のある北海道を―。高橋はるみ知事は、本社の荒木正芳代表取締役社長と対談し、「平成」から新たな時代へと歩み始める2019年の抱負をそう語った。北海道胆振東部地震からの復旧・復興を庁内や関係機関との連携強化で加速させるとともに、地域に寄り添ったきめ細かな対応を決意。災害検証を踏まえて一層の強靱(きょうじん)化を目指す。道内鉄道網の維持に関しては、利用促進や工夫を凝らした施策を展開する必要性を強調した。人口減少という大きな課題に立ち向かうため、将来を担う人材の育成や、世界の中で本道の強みを発揮する取り組みを推進して、本道の未来を切り開く。

 連携強化し震災復旧推進

-荒木 昨年の北海道胆振東部地震では、各地で甚大な被害が発生し、大規模停電(ブラックアウト)で全道が被災地となりました。震災から浮かび上がった課題と対策をどうお考えですか。

-知事 災害はいつどこで発生するか分からないものであり、あらゆる事態を想定した事前の備えが極めて重要です。

 今回の大規模停電により道民の暮らしや産業活動は重大な影響を受けたところで、こうした事態を再び生じさせないよう、国と北電に対し原因分析と再発防止策の検討を踏まえて、電力の安定供給に万全を期するよう強く求めています。

 道では、大規模停電が発生したとしても、その影響をできるだけ緩和していけるよう、停電発生後の対応や非常時の備えなどについて現在検証を行っています。また、胆振東部地震災害検証委員会を昨年11月に設置し、地震災害の対応も検証しています。検証結果を電力の安定供給や防災対策に反映し、本道のさらなる災害対策の充実強化、道民の安全・安心の確保に努めてまいります。

-荒木 これから復旧工事が本格化します。早期の復旧・復興に向けた方針をお聞かせください。

-知事 道では一日も早い復旧・復興を図るため、地域の実情やニーズを伺いながら、全庁一丸となって被災地域の生活再建や公共インフラの復旧などの対策を進めています。具体的には応急仮設住宅の早期建設をはじめ、発災直後から技術職員を現地に派遣し、建築物の応急危険度判定業務などに従事するとともに、情報収集や技術的なアドバイスを行ってまいりました。

 復旧・復興をさらに加速させるため、11月22日には「北海道胆振東部地震被災地域復旧・復興推進本部」を設置し、庁内の連携体制の強化を図ったところであり、地元市町村と一体となって、地域に寄り添った支援に取り組んでまいる考えです。

世界の中で本道の魅力と強みを発揮し、さらなる経済発展を期待する高橋知事(左)

 建設産業の担い手を確保

-荒木 観光が本道の基幹産業となる中、IR(統合型リゾート)、空港、鉄道と将来を左右する懸案を抱えています。

-知事 「IR」は、国内外から多様な層の集客が見込まれていて、インバウンドをはじめとする観光客増加に向けた大きな推進力になるものと考えています。一方で、ギャンブル依存症など社会的影響を懸念される声もあると認識しています。

 IRの誘致に関しては、経済効果をはじめとするプラス面と社会的影響等のマイナス面を総合的に勘案することが重要です。昨年7月に設置した有識者懇談会など幅広い方々の意見を伺いながら判断していきます。

 「道内7空港の一括民間委託」ですが、本道の将来の発展を確実にしていくためには、国内外から多くの人々を招き入れ、海外の成長力を取り込むことが重要であり、そのゲートウェイとなる航空ネットワークを一層充実することが必要です。

 ことし7月には、運営権者の候補となる優先交渉権者が選定される予定ですが、地域のことをしっかりと理解し、地域と一緒に汗をかいていただける方々を選定することが重要と考えています。民間委託を契機として、13空港全体の航空ネットワーク活性化を図り、道内経済の発展につなげていきたいと考えています。

 「鉄道」については、本道の鉄道網は道民の暮らしはもとより、観光や物流など産業全般にも関わる重要な交通基盤で、関係機関が一体となって利用促進を進めていくことが重要と考えます。

 道では、18年12月に北海道鉄道活性化協議会を設立したところです。JRの経営は先般の震災の影響などにより、極めて厳しい状況に置かれていることから、利用促進に向けた取り組みを戦略的かつ切れ目なく展開していくことが重要と考えており、知恵と工夫を凝らして、北海道の発展に寄与する鉄道網の構築に向け、オール北海道で取り組んでまいります。

-荒木 建設産業では担い手確保の苦慮が続いています。知事は建設産業の働き方改革と担い手確保をどう進めますか。

-知事 建設産業は就業者減少や高齢化など依然として厳しい状況であり、将来にわたる建設工事の品質確保と担い手の中長期的な確保・育成に関する懸念が高まっていることから、労働環境改善策が必要とされています。

 このような中、道では「週休2日モデル工事」、受注者からの発議に速やかに回答する「ワンデーレスポンス」、時間外労働縮減を目的とした「労働環境改善プロジェクト」など働き方改革実現への取り組みを進めています。

 担い手の確保・育成では、「建設産業ふれあい展」や高校生を対象とした「ICT体験講習会」、事業者には効果的な自社PR方法や若者の思考等を踏まえた育成方法を習得する「情報発信・育成方法習得研修会」を開催しております。

 道では「北海道建設産業支援プラン2018」に基づき、建設産業振興のための支援策を進めるとともに、働き方改革や担い手の確保・育成に関する取り組みを促進してまいります。

 建設産業は近年頻発する自然災害時に、道民の安全・安心の確保に重要な役割を果たしています。胆振東部地震でも道路の啓開作業に協力いただいたほか、停電が続く中、役場に発動発電機を配備するなど迅速かつ臨機に対応していただきました。

 このような安全・安心の確保のほか、雇用創出や地域経済発展に寄与する建設産業が持続的に発展するためには安定的な予算が必要であり、市町村や関係団体と連携しながら国等への要望など公共事業予算の確保を図っていきます。

 世界に開かれた本道築く

-荒木 ことしは新たな元号に移行する年ですが、知事は「平成」はどんな時代であったと振り返りますか。また、新時代の展望をお聞かせください。

-知事 はじめに、天皇皇后両陛下に心からお礼を申し上げたいと思います。昨年、両陛下に御臨席を賜り、北海道命名150年の記念式典を挙行できたことは、この上ない喜びです。両陛下には、胆振東部地震で被災された方々を大変心配され、被災地をお見舞いいただきました。国民とともに歩まれてきた、天皇皇后両陛下の温かい御心に道民を代表して、改めて感謝申し上げます。

 平成を振り返りますと、全体的には厳しい経済情勢が続いた時代だったと思います。バブル経済が崩壊し、いわゆる失われた20年に突入しました。道内では98年に拓銀が破綻し雇用情勢も悪化。08年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災など大きな衝撃もありました。

 本道では97年以降、人口減少の局面に入り、団塊の世代が高齢者となるなど大きな社会構造の変化に直面しています。道においても産業や地域の未来を担う人材の育成・確保や海外からの需要の取り込み、地域の経済・雇用の活性化など、持続可能な地域づくりを一層進めなければなりません。

 また、自然災害が頻発し、激甚化したことも挙げられます。93年の南西沖地震や2000年の有珠山噴火。私が知事になってからも、03年の十勝沖地震、16年の4つの台風の上陸・接近、18年の胆振東部地震など、強靱な国土づくりがますます必要となっています。

 一方、グローバル化が急激に進んだ時代でもあります。冷戦後の人やモノの自由な移動や中国をはじめ新興国の台頭、ICTの急激な発達で国を超えて人と人、経済や文化がつながるグローバル化が進展しました。

 こうした社会経済情勢の大きな変化の中で、昭和の在り方とは異なる、一人一人の幸福や新たな成長を模索する時代が、平成であったと思います。

 私は、こうした潮流を踏まえ、人口減少に伴うさまざまな課題に向き合い、世界の活力を取り込みながら、本道経済をさらに発展させるため、本道の未来を担い、世界で活躍できる人づくり、本道が持つ魅力や強みの世界への売り込み、競争力のある農林水産業、強靱な地域づくりなど、北海道創生の実現に向けて取り組んでいます。

 このたびの地震を乗り越え、世界に開かれた安全・安心で活力のある北海道を築き、50年、100年先の世代にしっかり引き継いでいきたいと考えています。

-荒木 最後に、知事の今後についてお聞かせください。

-知事 胆振東部地震により被災された地域の方々に一日も早く元の暮らしを取り戻していただけるよう、被災地の復旧・復興、そして、本道のさらなる発展に向けて、全力で取り組んでいます。

 私自身の今後については、一言で言えば16年間、一生懸命頑張ってきたこれまでの私の仕事を自分なりに総括し、新たな視点、立場から大好きな北海道のために働くということを決断した次第です。


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