この正月に書店へ行き、入り口付近に置いてあった一冊の絵本に一目ぼれし購入した。タイトルを『Michi(みち)』(福音館書店)という。京都在住の画家、junaida(じゅないだ)さんの作品である
▼男の子と女の子がそれぞれ自分の家から一本の道を歩き始め、風変わりな街を幾つも通り過ぎていく。ただそれだけの文字もない絵本だが、見開き2ページで色とりどりに描かれる街がとにかく美しい。蒸気機関車をかたどっていたり、大木をそのまま街にしていたり、宇宙に浮いていたり。どの街も実に独特なのだが共通する点が一つある。それは白い道が縦横に張り巡らされていること。人々はその道を歩き、世間話に花を咲かせ、憩う。男の子と女の子も歩き回ることで街の姿を知るのである
▼新しい年というのも似たようなものでないか。まずは目の前の一本の道を歩き始める。次第に枝分かれしていく道を慎重に選びながら進み、さまざまな経験をしてやっとその年の全体像が見えてくる。ことしは決まっているだけでも統一地方選、天皇陛下譲位、参院選、消費増税があり、どう考えても波乱含み。その上、国際環境も安定しているとは言い難い。3日には熊本で大きな地震が発生し、災害の不安も呼び覚まされた。道は最初から平たんでなさそうだ
▼「初暦未知なる月日歩み初む」熊崎わか子。「未知」とはつまり、読めぬ未来に続く「道」だろう。ことしはまだ始まったばかり。まずは歩き出してみねば。案外とその角を曲がった先に、きれいな風景が広がっているかもしれない。