古いものと新しいもの。一見相反するものの不思議な関係に気付いた詩人のまど・みちおさんは、それを発見したときの驚きを一編の作品にまとめた。題名は「どうして いつも」。使われるのは簡素な言葉ばかりだが、まどさんの思いが真っすぐに伝わってくる
▼「太陽/月/星 そして/雨/風/虹/やまびこ ああ/一ばん/ふるいものばかりが/どうして/いつも/こんなに/一ばん/あたらしいのだろう」。ずっと昔からあるのに、今も変わらず新しい顔を見せてくれているというのである。プロスキーヤー三浦雄一郎氏が南米最高峰アコンカグア登頂に挑んでいたニュースを追いながら、その詩を思い出していた
▼世界有数の長寿国日本の男性平均寿命は81歳(2017年)だから、現在86歳の三浦さんは高齢者の中でもより「古い」年齢層に属する。ところがやっていることは、いっぱしの冒険家でも尻込みするような過酷な挑戦ばかり。われわれの目を覚まさせるような新しい姿を見せ続けている。世界最高齢の80歳でエベレスト登頂に成功した三浦さんが今回選んだのがアコンカグア。頂上からスキーで滑降する計画まであったという。標高6000m付近で天候回復を待っていたが、きのうドクターストップで登頂を断念
▼とはいえ本人は至って元気というからやはりただ者でない。今遠征のフェイスブックに三浦さんは記していた。「出来ない理由より出来る理由を考えた方が人は元気に輝く」。自ら太陽や星のごとく輝きながら、誰もがそうなれるのだと身をもって教えている人だろう。