結婚生活を実りあるものにするには相手を尊重することが大切。よく聞く助言だが完璧な実践はなかなか難しい。その教えを伝える昔話が北欧スカンジナビア地方にある。こんな話だ
▼ある日、仕事から帰ってくるなり夫が妻に怒鳴った。「疲れて帰ってきたのにまだ飯もできてない。おまえは一日中家にいて家事も満足にできないのか」。妻が返す。「そんなに怒らないで。じゃあ明日は仕事を取り替えましょう」。翌日、夫は休日気分で家事に取り掛かる。最初に洗濯を始め、次に乳搾り。ところが洗濯物を干そうと思ったら赤ちゃんが泣き出し、ブタが搾乳機を蹴り倒し、ついには牛も逃げ出した。夕飯づくりになどまるでたどり着けない
▼夫婦ではないが共に国を運営する任を負う国会でも、最近、相手を尊重しないこの夫のような姿が見られる。厚生労働省の統計不正に端を発する国の統計問題で一部野党が、不正は国民にアベノミクス成功を印象付けるため政権が主導したものだとかみついているのだ。さすがに無理がある。不正は民主党政権を挟む2004年からで、12年の安倍政権発足後も数字は長らく悪いまま使われていた。政権主導ならなぜ当初から下駄をはかせなかったのか
▼昔話の夫と妻同様、政府批判する野党議員の多くもかつて仕事を取り替え政権を担っていたはず。本質は厚労省のモラルや人員の不足だと察していよう。尊重はせずとも相手を責めるばかりでは能がない。政府が謙虚になるのは当然だが、ここは与野党手を携え統計の信頼回復に努める方が国民生活の実りになる。