親しい友は生きていく上で大きな支えになるが、ときには敵の存在も自分を成長させる糧になるから人生というのは面白い
▼それを物語るような徳川家康の話を以前どこかで読んだ。家康が互いにしのぎを削った武田信玄死去の報を受けた際、こんな趣旨の言葉を述べたというのである。「隣国に強敵がいるからこそ武道に励み、政道も家法も自然と正しくなった。武田信玄がいなければ徳川は弱体化していたろう」。現代では共に創業者のスティーブ・ジョブズ元アップル社CEOと、ビル・ゲイツ元マイクロソフト社会長が激しく火花を散らしながらIT業界を大きくしていった例もある。好敵手がいたからこそ分かった自らの強みや弱みが、より良いものを作る原動力になっていたのだ
▼その意味ではこの2人にも、ポスト平成時代の素晴らしい北海道づくりのために徹底した政策論争を繰り広げてもらいたい。4月7日投開票の北海道知事選に出馬を決めた鈴木直道夕張市長と、石川知裕元衆院議員である。両氏とも無所属だが、鈴木氏は自民党や公明党などの推薦、石川氏は立憲民主党など野党系勢力の後ろ盾を得ている。片や夕張再生に道筋を付けた有言実行の若きリーダー、片や45歳ながら衆院議員として3期の実績を持つ政策通。お互い相手に不足はあるまい
▼道民としては両者が真っ向から議論を戦わせ、本道の現実や課題、未来像を浮き彫りにしてくれることを願う。国政の代理戦争は遠慮しておく。この厳しい戦いを勝ち抜いた新知事が、これからの道政の糧にできる知事選になるといい。