にわサイクリングツアーズを主宰する丹羽隆志氏が12日、ANAクラウンプラザホテル釧路で開かれたくしろサイクルツーリズムセミナー2019で講演した。丹羽氏は道東地域がサイクルツーリズムの可能性がある場所であるとする一方で、1次産業の衰退が観光コンテンツの減少につながるという危機感を示した。
くしろサイクルツーリズム推進協議会と釧路開建が主催。自治体関係者や観光関係者など約100人が参加した。
丹羽氏はインバウンドや日本人を相手に国内外でサイクルツーリングを企画・ガイドをしている。国内外を見てきた視点からインバウンドが日本のサイクリングをどう見ているか、また、日本にサイクルツーリングに来てもらうにはどうすべきか講演した。
英語圏でサイクリングツアー会社は多数あり、人気の行き先はフランスやイタリア、スペインなど豊かな自然や伝統的な農漁村風景が広がり、食事などが充実している点を条件に取り上げる。一方で日本は順位が高くなく、「アジアで人気のカンボジアやベトナムに対し、どう日本が食い込むかが重要」と強調した。
さらに、道東地域が本道の他の地域と比較して「風景の変化が大きく、魅力的なポイントも多く、宿泊や食事など旅行インフラが点在している。空港が多く本州からのアクセスも良い」と評価する。その上で、眠っている観光資源の洗い出しが必要とし、点在する観光スポットを結ぶ道路がどれだけ美しいかが重要になると指摘した。
サイクリング環境の整備については、安全で楽しいルート設定や道路情報などの情報環境整備、宿泊施設での自転車保管場所やメンテナンス用品の充実を課題として挙げている。地元に住むサイクリストがお勧めのルートや観光情報を発信するサイクルコンシェルジュの養成も必要とアドバイスした。
こうしたサイクルツーリズムの隆盛、充実を願う一方で、「10年後にサイクルツーリズムは存在しているかという危機感を抱いている。サイクリングは道があってこそ、道は人の暮らしがあってこそ」とし、農漁村にこそ観光資源があることを提唱した。
1次産業衰退に対応した例としてフランスが農産物をブランディングしたことや農村の美しさをアピールし、サイクリストやドライブ観光客を誘客したことを示し、「1次産業を活性化させるための一つとしてサイクルツーリズムがある」とした。