エボラ出血熱という病気をご存じだろうか。主にアフリカで見られる致死率の非常に高いウイルス性感染症である。2014年にもリベリア共和国で大流行した
▼支援に赴いたスウェーデンの医師ハンス・ロスリング氏が著書『ファクトフルネス』(日経BP社)にその経験を記している。「恐ろしい伝染病が、突然流行りだした」との一報を聞いたとき、他の伝染病同様すぐに終わるだろうと楽観視していたそうだ。ところが発症者数の推移を知り悠長な気分は吹き飛ぶ。3週間ごとに発症者が倍増していたのである。そのままのペースなら世界中に飛び火する日も遠くない。氏は初期段階でくい止めるため急いで現地に飛んだという
▼「豚コレラ」の感染拡大が止まらない。残念ながら日本ではこの初期対応がずさんだったようだ。愛知県の養豚場が感染の疑いがあると分かった1月以降も、子豚を他の農場に出荷し続けていたのである。結果を予測する想像力もモラルも欠けていたと批判されても仕方がない。そもそもは海外から感染肉がひそかに持ち込まれ、それを食べたイノシシが媒介したとみられている。昨秋には岐阜で1例目を発見していたのに、防疫意識や知識の不足で被害を大きくしてしまったのだ。既に岐阜と愛知、滋賀、大阪、長野の5府県に飛び火している
▼怖いのは終わりが見えないこと。きのうも愛知でまた1例が確認された。本道も養豚数では鹿児島、宮崎に次ぐ全国3位。今回の地域からは遠いが人ごとでない。予測を超えた振る舞いをするのがウイルスだ。楽観は禁物だろう。