スナックに行くと必ず一度はカラオケで歌うという人も少なくないのでないか。演歌歌手渥美二郎さんが1978年に発表して大ヒットした「夢追い酒」(星野栄一作詞・遠藤実作曲)である。破れた夢の切なさが胸にじんと響く
▼一番はこんな歌詞だった。「悲しさまぎらす この酒を 誰が名付けた 夢追い酒と あなたなぜなぜ わたしを捨てた みんなあげてつくした その果てに 夜の酒場でひとり泣く」。もしかするとかつて民主党議員だった方々も今、この歌のような心境でいるのかもしれない。夢を実現しようと全てささげたのに国民はなぜわれわれをあっさり見捨てたのか、というわけだ。きっと泣きたいくらいの気持ちだろう
▼しかも大切にしていた夢を「悪夢」と言われてしまっては立つ瀬がない。安倍首相が10日の自民党大会で12年前の選挙を振り返り、「悪夢のような民主党政権が誕生しました」と発言。これに12日の衆院予算委員会で立憲民主会派の岡田克也議員が猛然とかみついた。身内の会とはいえ、現首相の言葉としては確かにあまり褒められた表現でない。興に乗ると口が滑る悪い癖が出た。ただし一国民として言わせてもらえば、悪夢としか思えない出来事が多々あったのも事実
▼「コンクリートから人へ」で公共事業を悪者に仕立て、「政治主導」で行政は停滞、マクロ経済にはほぼ無策だった。揚げ句に沖縄県辺野古移転の迷走、福島原発事故を含む東日本大震災対応の混乱である。夢を追うのもいいが、現実を見失うとまた「あなたなぜなぜ」と泣くことになろう。