高齢者の交通事故

2019年02月18日 09時00分

 年を取ると誰でも体の動きが緩慢になり、頭も若いころのようには速く回らなくなる。詩人のまど・みちおさんが91歳の時、「トンチンカン夫婦」という詩で自身の経験をユーモラスに描いていた

 ▼こんなくだりがある。「私が片足に2枚かさねてはいたまま もう片足の靴下が見つからないと騒ぐと 彼女は米も入れてない炊飯器に スイッチ入れてごはんですようと私をよぶ」。毎日そんな競争をしていたという。ほのぼのとした老夫婦の日常風景が目に浮かんでくる。ところで「トンチンカン」も家庭内の出来事だから笑い話で済んでいるが、もし家の外だったら取り返しのつかない結果につながりかねない

 ▼警察庁が先週末発表した2018年の「交通死亡事故の特徴等について」によると、高齢者の人口10万人当たり死者数は全年齢層の2倍に達するそうだ。全死者数の半数は歩行中か自転車乗用中の事故で、その7割が高齢者。しかも自転車に関しては、実に8割が法令違反を伴うものだったのだとか。横断歩道もない道路をゆっくり歩いて渡っている。車道の左側を走っていた自転車が急に進路を変え車の前に飛び出す。そんな高齢者の予期せぬ行動にひやりとさせられた人も多いのでないか

 ▼高齢者人口は伸びる一方だ。交通事故の高齢化問題ともいえるこの種の出来事は今後も増えこそすれ減ることはあるまい。『平成川柳傑作選』(毎日新聞出版)にこんな作品があった。「高齢を笑った俺今82」字下手。皆年を取る。老いに対する理解を深め、被害者にも加害者にもならないようにしたい。


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