駅弁

2019年02月20日 09時00分

 子どものころのことだから1960年代の話である。SL(蒸気機関車)が引く「汽車」で家族旅行をした際、目当ての駅で父親がいったん汽車を降り、ホームの売店まで名物の駅弁を買いに走った

 ▼ところが発車ベルが鳴っても父親は戻ってこない。無情にも汽車は動きだす。置き去りにされてしまったんだと動揺していると、不意に扉が開き駅弁とポリ容器のお茶を抱えた父親が現れる。そんなことがよくあった。駅弁といえば釧路支社に勤務していた若手時代、札幌に向かうときは朝必ず釧路駅で「かに飯」を買い込んでから特急に乗り込んだものだ。たっぷりとのったかにはもとより、甘じょっぱく煮付けられたシイタケのうまさといったら

 ▼「かにめし」といえば長万部駅も忘れるわけにはいかない。こちらは函館駅を出発してから車内販売に注文し、長万部駅で受け取るという寸法。出来たての風味に加え期待感も調味料となり、えも言われぬ味わいである。函館にいたころ、よく利用させてもらった。惜しいことに車内でその出来たての「かにめし」を食べることが、もうできなくなるそうだ。JR北海道が最後まで残っていた特急「スーパー北斗」の車内販売を今月28日で終了させるためである

 ▼コンビニなどの普及で利用が減り、赤字が続いていたらしい。あまたある駅弁の一販売形態が消えるだけと言ってしまえばそれまでだが、独特の経験ができる機会が失われる意味は決して小さくない。経営難の折、不採算事業の削減はやむを得まい。旅情が置き去りにされるのを見るのは忍びないが。


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