天皇陛下が退位される4月30日まであと2カ月である。先の24日から26日にかけては「天皇陛下ご在位三十年記念式典」や宮中茶会が相次いで開かれ、多くの人がお祝いに駆け付けたようだ
▼式典で印象深かったのは陛下が皇后さまの一首を紹介したこと。平成の始まりに詠まれた歌という。「ともどもに平らけき代を築かむと諸人のことば国うちに充つ」。〝共に平和な日本を〟との陛下の強い意志が伝わってきた。NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』をご存じだろう。プロとして活躍する人物に密着し、仕事の仕方や神髄を探るドキュメンタリーである。無理は承知だが、この番組に陛下が出演したら学べることがたくさんあるのでないか
▼陛下はよく「象徴の務め」という言葉を使われる。「務め」とはそれだけでないが仕事を指す。今の時代に合った象徴のあり方を突き詰め、実践していく陛下の姿にすさまじいプロ意識ともいえるものを感じるのである。折々の「おことば」からそれがのぞく。番組ではその人の信念を表す幾つかのキーワードが示される。陛下であれば冒頭の「共に平和な日本を」に加え、「いつも人々と共に」「国民の安寧と幸せを祈り」といった言葉が並ぼう。国民は30年間その通りの仕事を見てきた
▼毎回、番組の最後にこんな問い掛けがある。「プロフェッショナルとは?」。譲位を表明した2016年8月の「象徴としてのお努めについてのおことば」の中に答えを見つけた。「人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うこと」。陛下の流儀である。