たった一度の過ちで、人生を台無しにしてしまうことは世の中に珍しくない。「覆水盆に返らず」のたとえもある
▼過ちと聞くと、高橋真梨子さんが自ら詞を書いた名曲『ごめんね…』(水島康宏作曲)を思い出す。中にこんな一節があった。「消えない過ちに 泣き続けるのなら このまま二度と 目覚めたくない すごく すごく 貴方を苦しめた」。深く考えることなくしでかした行為を後悔しているのである。こちらで苦しめられたのは「貴方」でなく雇い主やお客様だが、過ちを犯した若者も目覚めてつらい現実を見たくない心境でないか。飲食店やコンビニなどのアルバイト先でわざと不衛生な行動をとり、SNS(ウェブ交流サイト)に投稿する若者が後を絶たない
▼深い考えもない単なる悪ノリ。称賛を表す「いいね」の数を増やしたいがための面白アピールに違いない。ところが動画は投稿者のそんな意図を超えて拡散し「炎上」。雇用していた店は評判を落とし、多大な損害を被ることになる。実際客足が遠のき、閉店に追い込まれた例もあるという。損害賠償請求も辞さないとの構えを見せる企業もかなり増えているとのこと。当の若者は個人情報を暴かれた上、多額の賠償金を請求され、就職も難しくなる。まだこれからの人生が台無しになりかねない
▼やはり不適切動画が問題になった「大戸屋ごはん処」を展開する大戸屋ホールディングスは12日、全店休業にして従業員研修をするそうだ。「若き者と風上の火とは油断ならず」のことわざもある。炎上を防ぐための火の用心だろう。