昨秋完成した札幌市円山動物園の新しいゾウ舎で12日、アジアゾウの一般公開が始まった。ミャンマーから来た4頭のうちのシュテイン(27歳)とニャイン(5歳)の親子、そしてパール(15歳)である。いずれも雌だという。ニュース映像を見たが、元気に遊ぶ姿が何とも愛らしい
▼落ち着いた風格を漂わせていた「花子」(2011年死亡)を見て育ってきた世代の目には、あの活発さが新鮮に映ったのでないか。新たなゾウの導入に時間がかかったのはワシントン条約のためだ。絶滅危惧種の商取引が禁止され、種の存続に科学的裏付けがない限り輸入もできなくなった。そこで円山は繁殖に取り組む姿勢を明確にし、高い壁を乗り越えたのである
▼ゾウの繁殖といえばこちらの話も興味深い。近畿大などのチームが11日、2万8000年前のマンモスの化石から採取した細胞核の機能を、一部目覚めさせることに成功したと発表したのである。完全に絶滅したマンモスを復活させられるかもしれないという。チームはシベリアで発掘された「YUKA(ユカ)」と呼ばれるマンモスから細胞核を採取し、マウスの卵子に注入。43個のうち5個で細胞分裂直前の状態になったことを確認したそうだ
▼繁殖し再び世界に、と想像は膨らむがそう簡単でもないらしい。DNAの損傷が激しく、細胞の変化が途中で止まってしまうのだとか。それでも可能性を広げた意義は大きい。多くの動物を絶滅させてきた人間の使命でもあろう。もしかすると100年後の円山動物園で、元気なマンモスの姿が見られるかも。