表に顔を出さず、裏で糸を操っている人物を俗に黒幕という。政界工作や企業の買収劇、事件などに絡んでうわさされることが多い。あれはAの手で行われたが、実は全てBの企てだ、という具合
▼歴史上の出来事も格好の材料だろう。坂本竜馬暗殺がその典型かもしれない。西郷隆盛が黒幕だったとの説が根強く語られる。大山が鳴動しているのにネズミが一匹しか出てこないとき、人は黒幕の存在を感じるようだ。賃貸住宅大手「レオパレス21」の物件に施工不備が多数見つかった問題も、どうやら現場の不注意や法令軽視だけで終わらないようだ。外部調査委員会がおととい、2006年まで社長を務めた創業者深山祐助氏が関与していたとする中間報告書を発表した。黒幕的存在を明らかにしたわけである
▼「深山祐助氏の指示の下、同氏の直轄部門となっていた商品開発部門において」、界壁の内部充填(じゅうてん)剤に遮音性の基準を満たさない「発泡ウレタンを使用する方向性が示された」という。外壁仕様と天井仕上げが国交省の規定に適合しない、小屋裏に界壁がないといった不備もあった。卒業や異動の時期に間に合わせるための裏技だったようだ。〝住む〟という生活の最も基本となる部分で信頼を裏切った責任は重い
▼レオパレスは中間報告を受けて記者会見を開き、当時の社長は違法性を認識した上で指示したわけではないとの見解を示したそうだ。さて、多大な迷惑をこうむっている建物オーナーや入居者はどう受け止めたろう。黒い幕の向こうにも光は見えなかったのでないか。