自覚できない磁覚

2019年03月25日 09時00分

 空を駆け巡る自由への憧れと、住み慣れた場を離れねばならぬ悲哀とが混然一体となって心を刺激するからだろう。昔から渡り鳥に着想を得た歌は多い

 ▼年配の方であれば小林旭の『ギターを持った渡り鳥』(西沢爽作詞)を思い出すのでないか。「別れ波止場の 止り木の 夢よさよなら 渡り鳥」。若い人ならアレクサンドロスの『ワタリドリ』(川上洋平作詞)あたりか。「ワタリドリの様に 今旅に発つよ」。日本の南の地域ではもう春の渡りが始まっているという。ところで渡り鳥が毎年正確に目的の地まで飛べるのは、地磁気を感じ取ってナビゲーションに利用しているからだといわれている。体内に優れたセンサーがあるわけだ

 ▼さすがに動物は人間にない超能力を秘めている。これまではそう感心していたのだが、この能力、どうやら人間にもあることが分かってきた。東大や米カリフォルニア工科大などの共同研究チームが先日、人間も地磁気を感じる能力があることを実験で明らかにしたのだ。チームは磁気を遮断した部屋で被験者の頭部に地磁気程度の刺激を与えた。すると脳波にはっきり反応が現れたそうだ。人間が持つのは五感とされ、第六感といえば直感のことだったが、今回は科学的に「磁覚」の存在が証明されたのである

 ▼もっとも視覚や聴覚と違い非常に弱く、意識もできないためすぐに役立てられるわけではない。犬の嗅覚は最大で人の1億倍というから、磁覚も渡り鳥と人ではそれくらい差があるのかもしれない。まあ、自由と悲哀を抱えた渡り鳥は歌の中だけで十分か。


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