巨大IT企業の歪んだ商習慣

2019年04月19日 09時00分

 江戸時代、藩主が愚かだと領民は塗炭の苦しみを味わったようだ。ぜいたくのために年貢を上げ、人々を領地に縛り付けておこうと法を改悪する

 ▼小説家吉川英治は短編「脚」で悪政にあえぐ農民にこうつぶやかせていた。「いッそ、鍬を捨てて、馬口労か、木挽かになろうとしても、役銀をとられるし、油屋、酒屋も株もの、川船で稼げば川運上、雑魚を漁っても、網一つに幾らの税だ」。農民は思う。「一揆だ」。いまやインターネット通販を牛耳る巨大IT企業は、傘下で店を開く取引先にとって藩主のような存在なのかもしれない。有無を言わさず高い手数料を強いたり、一方的に契約条件の変更を迫ったり。取引先に対するそんなIT企業の歪んだ商慣行が幅を利かせているという

 ▼公正取引委員会が17日発表した「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査」で判明した。まさか今どき「生かさず殺さず」でもあるまいが、利益の最大化を狙うIT企業の姿が露わになって興味深い。対象は楽天とアマゾン、ヤフーの3社。取引先の811人から回答を得た。結果を見ると規約は楽天で93.2%が「一方的に変更された」と回答。93.5%が「不利益な内容があった」とした。アマゾンはそれぞれ72.8%と69.3%。利用料も似た傾向である

 ▼これを受け政府は透明性の確保や公平な取引実現に向け新法を検討するそうだ。商売に過度の規制はいただけないが、仮想空間で一揆は起こせないとなればある程度の介入もやむを得まい。ただ、まずは藩主の善政を望みたいものだが。


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