他人由来のiPS網膜細胞

2019年04月22日 09時00分

 長年山登りをしていると、高さと行程の目安となる「合目」を信用しなくなる。山麓から1合目、2合目と増えていき、頂上が10合目となるところまではいずこも同じで問題ない。ところがこの目安が大抵あてにならないのだ

 ▼例えば羊蹄山に登ると森林を抜ける6合目までは一定の間隔で標識を見るが、7合目あたりから歩いても歩いても次が出てこなくなる。かと思えば8合目を過ぎたらすぐ頂上に到達する山も。もともと高さを単純に10等分しているのでなく、険しさなど人が実際に歩いた感覚も勘案して決められているのである。さて、それでは理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーの目にはこの研究がどんな山と映っているのだろう

 ▼他人の細胞から作ったiPS細胞を網膜細胞に変え、重い眼病患者に移植する世界初の臨床研究のことである。高橋氏は先週の日本眼科学会で患者5人の経過を観察した結果、安全性が確認されたと発表。「実用化に向け7合目まできた」との見方を示していた。研究対象は「加齢黄斑変性」。移植後1年以上たっても患者5人に目立った拒絶反応はなかったそうだ。自分の細胞で作ると拒絶反応は起こらないものの、作製期間と費用が膨大になる。他人由来ならそれを大幅に低減できるのだとか

 ▼同学会によるとこの病気は日本人の失明原因の第4位で、50歳以上の約1%にみられるという。研究成果は朗報に違いない。7合目まできたとはいえ山登りではそこから険しい「胸突き八丁」の始まることがよくある。気を抜かず一歩一歩頂上を目指してほしい。


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