デフレを背景とする低成長が長らく続いているのも一因だろう。日本の将来を悲観する意見をこのところしばしば目にする
▼いつの間にか国内総生産(GDP)は中国に追い越され、最先端のICT分野では米国の後じんを拝するばかり。社会学者エズラ・ヴォーゲル氏が「ジャパンアズナンバーワン」と呼んだ高度成長期や1980年代後半のバブル経済を知る高齢世代は、とりわけ強く日本の斜陽を感じていよう。「日本は暗いトンネルの中にいる」「わが国は既に三流国に成り下がった」。年配の方がそんな気持ちに襲われるのも分からないではない。ではこの時代の真っ只中を生きる若者はどうかといえば、見えている景色はまるで違うようだ
▼日本財団が先月末発表した〝18歳意識調査〟によると、「日本が良い国だと思うか」との問いに、76・9%の若者が「思う」と回答したという。「わからない」が16・4%あったものの、悪い国とする「思わない」は6・7%しかなかった。意外な高評価である。どこが良いのか。調査では理由も尋ねていた。最も多かった意見は「平和だから」。多少の停滞感はあっても紛争がなく、豊かで普通にご飯が食べられる日本は素晴らしいというのである。治安の良さや整ったインフラ、優れた伝統や文化を挙げる人もいた
▼さて、この調査結果を知ってどんな印象をお持ちだろう。今の日本が良いなんてそんなはずはないと思ったか、はたまた若者に日本の底力を教えられたと感心したか。気を付けた方がいい。悲観論の方が心地良いなら年を取った証拠である。