住宅宿泊業法(民泊新法)の施行から15日で1年が経つ。道内の届け出件数は5月末時点で2629件と東京、大阪に次ぐ件数となった。好調な推移を受けて簡易宿所など、よりビジネス的な業態を目指す動きも強まっている。半面、外国人向けのヤミ民泊など、適法化の課題も残る。民泊ビジネスの今を追った。(建設・行政部=仲道 梨花、山本 浩之記者)
宿泊料を取り旅行客を住宅などに宿泊させる民泊は、旅館業法などの認可が必要だったが、インバウンド(訪日外国人旅行)増加を受け、民泊新法を制定。年180日の営業上限や苦情対応など運営や管理のルールを決め、都道府県などへの届け出制とした。
道内の届け出件数は好調に伸び、5月末には2629件に達した。利用者を国籍別で見ると、中国や韓国、台湾などアジア圏が多く、日本人は16%にとどまった。
民泊解禁当初は、営業日数や管理コストの上昇など制約が多く「ビジネスとしては厳しい」との見方が広がったが、外国人観光客の多様化するニーズの受け皿として役割を果たした。民泊施設の紹介サイト「Airbnb」の代行業務を手掛けるair Best(本社・福岡)札幌支店の斉藤津久志営業設営課長は「繁忙期にしっかり客を取れている事業者が多く、ビジネスとして十分に成立している」と話す。
外国人観光客からは札幌駅や大通公園周辺など好立地の物件だけでなく、札幌郊外の戸建て住宅の人気も高い。斉藤課長は「リゾート地として北海道を訪れる外国人観光客のニーズに民泊がいち早く対応できた」と好調の要因を分析する。
民泊やシェアハウスの管理・運営代行を営むマッシブサッポロ(本社・札幌)は、全国的に民泊登録が伸び悩む中「札幌は大阪と並び登録が増えていて、伸びしろはある」(広報担当・清水聖子氏)と強調した。
好調を受け、旅館業法の許可を取得して簡易宿所に変更するなど、よりビジネス的な業態を目指す事業者も増えている。民泊代行業務を担う事業者の多くは、より収益性が高くなる旅館業法の許可を受けるように促している。
民泊解禁に合わせた旅館業法改正に着目し、無人ホテルという新たな業態を開拓してきたマッシブサッポロは、民泊の業態転換が進む背景として「法的な基準をクリアしても旅館業のほうがメリットがある」と指摘。観光客が伸び続ける中、365日間を通じ営業可能になることや、民泊に比べ予約サイトへの掲載範囲が広いことなどを利点に挙げる。同社は引き続き、観光客の増加傾向が続くとみて、民泊の管理・運営代行や、新業態のホテル運営など多様な宿泊の受け皿づくりに注力していく方針という。
北海道建設新聞2019年6月14日付1面の記事から抜粋。全文は同日付の本紙および有料会員サイトe-kensinプラスに掲載しています。