子どもの何げない一言にハッとさせられる。親なら誰しも経験することだろう。利害得失の偏見を持たない目には時に物事の本質が見えるらしい。詩集の中にそんな目を持つ6歳の男の子の一編があった
▼「ママ/アメリカは/カナダのとなりだからさ/『カナダくん あそぼ』っていってさ/ニッポンは/中国のとなりだから/『中国くん あそぼ』っていったらいいのにね」(『ことばのしっぽ』中央公論新社)。題名は「ちきゅうぎを見て」。その状況でこう問い掛けられた親は「本当にそうだよね」と深くうなずくしかない。さて、この6歳の男の子の詩と同じ「地球儀を俯瞰する」外交を標榜(ひょうぼう)するのが安倍首相である。その真価が試される大一番となろう。きょうから大阪市で主要20カ国・地域(G20)首脳会議が始まる
▼日本初開催とあって政府の意気込みも相当だ。トランプ、プーチン、習近平、メルケル、マクロン―。世界の名だたるリーダーが一堂に会するのだからそれも当然か。主な議題は世界経済の健全化やデータ管理の国際ルール作り、海洋プラスチックごみの削減など。どれも大事だがそれらはあくまでも予定調和の表舞台。実際に皆が一挙手一投足を見守る最重要の出し物は、火花散らす2国間によって舞台袖で繰り広げられる首脳会談である
▼今回であれば一番は激化する貿易摩擦で世界中に暗雲を広げる米中だろう。たまたまホスト役はその両国の隣人である日本の安倍首相だ。「アメリカくん、中国くん、そろそろ仲直りしよう」と橋渡しできるといいのだが。