ほぼ2年おきに刊行される米ミステリー作家ジェフリー・ディーバーの「リンカーン・ライム」シリーズ(文藝春秋)を毎回楽しみにしている。ライムは高度な科学捜査と分析力で事件の真相に迫る犯罪コンサルタント。冷酷非情な犯人との息詰まる知能戦が読みどころである
▼このシリーズが他のミステリーと一線を画するのは、ライムが四肢まひ者であること。動くのは左の薬指と両肩、そして頭だけなのである。先天的な障害ではない。ニューヨーク市警時代、捜査中の事故で脊髄を損傷したのだ。世界最高の犯罪学者と呼ばれていただけに辞めてからも警察からの協力要請は絶えない。体は動かなくとも頭脳は活発に働いているのである
▼先の参院選で「れいわ新選組」から筋萎縮性側索硬化症の船後靖彦氏と脳性まひなどを抱える木村英子氏が初当選した。両氏とも重い身体障害があるが、障害者福祉の充実に尽力してきたという。これからはライムのように経歴を生かし国民の負託に応えてもらいたい。れいわ新選組の政策は耳触りの良い言葉ばかり並び、大衆迎合的な印象が強かった。一方で両氏は極めて現実的かつ具体的な存在だ。参院本会議場では早速、大型の車いすを使うためのバリアフリー工事が実施された。それだけでも多くの人に何がしかの気付きを与えたろう