自主的に働き方改革/労働時間短縮実現
働き方改革への対応が求められる中、5年前から自主的な改革を推進する食品輸送の日幸産業運輸(本社・石狩)では、社員の賃金アップを実行した上で労働時間短縮を実現。その評判は広まり、今ではドライバーを募集すれば競争率3倍の人気企業だ。来春、小樽市内に第二物流センターを開設する朝井清美男社長に働き方改革に取り組むきっかけとポイントを聞いた。 (小樽支社・小田 真沙樹)
―物流業界はドライバー不足と聞くが。
これまで欠員分は既存ドライバーの紹介で補充していたが、来春の第二物流センター開設に合わせてドライバー7人の募集に25人が応募した。
―集まる理由は。
2―4㌧ドライバーは、残業150時間で給料は30万円。これが運送業界の基本だったが、労基署の指摘で7年前に労働時間短縮に取り組んだ。給料を削減せず労働時間を短縮するため、業務内容を全て見直した。ドライバーの配送ルートや休憩時間をチェックし、出退社時間の調整を図り、1日当たりの労働時間を分単位で削減。トラック台数は人数分から必要分に減らした。
―社員の反応は。
言われた仕事をしっかりとこなしているので当然、業務の見直しに不満を覚える。台数削減も反発を受けた。重要なのは現場と寄り添うことだ。一緒に考え、そこで初めて会社の手入れができる。
―働き方改革の成果は。
ドライバーの時間外労働を80時間以内に収めることに成功したことで、満足度が上がり、昨期は約4億円の営業利益を確保した。会社は社員を幸せにするための道具。会社を磨いて、中身の濃い仕事をし、早く帰宅して報酬をもらう社員にとって、理想的な環境づくりに努めた。「草分けとなれ」をスローガンに掲げ、小さな改善から始める大切さを呼び掛けている。
―来年稼働の新物流センターの特徴は。
前提として、価格競争が激しい運送だけでは採算確保は難しい。このため、運送と物流センターをパッケージ化し、顧客ニーズに柔軟に応じた営業を提案している。これに伴い今回、顧客増加で既存施設の稼働率が100%近くになったことから新たな物流センターが必要になった。
新施設のコンセプトは省人化と生産性向上。各セクションで自動化設備を導入するため、危険な冷凍庫内の作業がなくなるなど、労働環境の向上が期待できる。
(北海道建設新聞2019年8月8日付2面より)