お盆が明けた。先週はふるさとへ墓参りに帰った人も多かったに違いない。毎年この時期は終戦記念日とも重なり、日本国中が慰霊の雰囲気に包まれる。日本人にとってはやはり特別なときだろう
▼15日に開かれた令和初となる全国戦没者追悼式では、ことし5月に即位した天皇陛下が「過去を顧み、深い反省の上に立って」戦争の犠牲者を追悼し、世界の平和とわが国の発展を祈られていた。皆、心は同じでないか。そんな慰霊の雰囲気が手を伸ばさせたのかもしれない。お盆中に書店で『特攻 最後のインタビュー』(文春文庫)という本を見つけ、読みはじめた。戦闘機や重爆撃機、肉迫攻撃船艇といった特攻兵器で一度は出撃したものの、故障や撃墜などで心ならずも生還した元特攻隊員に話を聞いた記録集だ
▼特攻といえばその無謀さや人命軽視の姿勢から、当時の帝国陸海軍の愚かさの象徴ともされる作戦である。昨今では亡くなった方々を評して「無駄死に」、「無意味な死」とする意見も目に付く。読むと隊員たちの多くは特攻の誤りに気付いていた。それでも親兄弟やふるさとのため捨て石になる覚悟で出撃したのである。これを尊いと言わず何と言おう
▼組織的な特攻は徹頭徹尾愚かだった。ただ自己犠牲の精神まで「無意味」とする必要はない。戦争を一面的に捉えると大切なものを見失う。元隊員の江名武彦氏は語っていた。「世界史・日本史、特に現代史です、これを、やはり複眼的な目でもって勉強して頂ければと思います」。戦後生まれが「反省の上に立つ」にはそこからだろう。