優れた組織とは―。組織人なら誰でもその答えを探していよう。経営評論家大橋武夫氏は著書『兵法 孫子』(PHP文庫)でサッカーやバレーボールのチームを答えの一つとして例示していた
▼いわく、「どこへボールがとんで来ても、全選手が機敏に反応して行動を起こし、遊んでいるものはない」。ボールから離れていて動いていない選手も常に作戦を意識し、すぐに行動できる態勢が整っているというわけだ。こちらの組織は理想のチームに仕上がったのだろうか。第4次安倍再改造内閣がきのう発足した。ざっと見て気付くのは、在職日数が歴代2位となった今も変わらぬ安倍首相の意欲である。全19閣僚のうち13人を初入閣させる大胆な入れ替えで、息の合う議員を多数迎え入れた
▼何より政権の最中枢である麻生太郎副総理兼財務相と菅義偉官房長官はそのまま残し、「地球儀を俯瞰する外交」を両輪で進めてきた河野太郎前外務相は防衛相に横滑りさせている。皆が同じ目標を向いたチームは強い。首相の掲げる「安定と挑戦の強力な布陣」とはそのことだろう。国政では消費増税や社会保障改革、憲法改正、外交では自由貿易の推進や歴史問題、軍事対立など日本の前には多くの難題が横たわっている。政権が盤石でないと解決の糸口さえ見つけられない
▼一つ心配なのは、少したつと往々にしてボールを無視して遊びだす者や勝手なプレーで試合を台無しにする者が現れることである。持論に固執した監督が暴走する展開もないとはいえない。さてこのチームはどれだけ点数を挙げられるか。