子どものお迎え時間に遅刻する親が多いことに困った保育園が、遅刻に罰金を科してみたそうだ。最初は遅刻が減ったものの、そのうち意外な変化が出てきた
▼お金を払えば遅れても大丈夫と考える親が現れ、その行動はすぐ他の親にも広まったのである。「自分はお金でサービスを買っている」と自らの行動を正当化する気持ちが湧き、罰金制度の導入前にはあった遅刻に対する罪悪感がなくなってしまったらしい。親たちは罰金という「免罪符」を買うことで道徳的問題を解決し、遅刻の権利を手に入れた。この例を『ヤバい経済学』(東洋経済新報社)で紹介したスティーブン・D・レヴィットはそう分析している。魔力ともいうべきお金の力だろう
▼さて、こちらの元助役はどんな権利をわが手にしようとしていたのか。八木誠会長ら関西電力の役員に、高浜原子力発電所が立つ福井県高浜町の元助役が約3億2000万円相当もの金品を渡していたのである。少なくとも20人の役員が受領していたそうだ。報道によると元助役は原発担当の部署に着任した役員らにお祝いなどとして現金や商品券を持参。返そうとすると激高するため断れず、個人で保管していたのだとか
▼ただ金額が大き過ぎる。金を払っているのだから多少のことには目をつぶれという圧力だったか。役員らに悪気はなかったとしても、金を受け取ったことで元助役に「免罪符」を与えたのは確かだろう。たとえ事業を円滑に進めたかったとしても道徳を無視して良いわけがない。原発産業への信頼を揺るがした役員らの責任は重い。