行く手にどんな困難が待ち受けていようとも、夢を信じて進むのが一つの充実した生き方だろう。先日終わったNHK連続テレビ小説『なつぞら』の十勝編後段にこんな場面があったのを思い出す
アニメーターになる夢をかなえるためには家を離れねばならない―。そう悩んでいたなつに泰樹じいちゃんが涙ながらに言うのである。「行ってこい。漫画か映画か知らんが、行って東京を耕してこい。開拓してこい」。厳しい自然に立ち向かい、荒れ地を農場に造り替えてきた開拓一世のじいちゃんにとっては、新たな世界を切り開こうとする者は皆開拓者だったのである
▼その伝でいくと、この人もまた開拓者と呼ばれるにふさわしい。バスケットボールBリーグ1部「レバンガ北海道」の折茂武彦選手兼代表(49)である。本道のプロバスケットボール界を耕し、常に先頭に立って引っ張ってきた。その折茂選手が今季限りでの引退を決めたという。おととい札幌市内のホテルで記者会見を開き、明らかにした。実業団時代は全日本メンバーとしても活躍。2007年に発足したばかりの「レラカムイ北海道」に移籍した。運営会社が経営難に陥ると、チームを救うため自ら「レバンガ北海道」を立ち上げ、本道にプロバスケの火をともし続けた
▼引退理由は体力の衰えではないという。そうだろう。ことし1月には日本人選手初の通算1万得点も記録している。ただお疲れさまと言うにはまだ早い。今季リーグはきょう開幕だ。本道のプロバスケを開拓した「レジェンド」の姿をしっかり目に焼き付けたい。