栽培や保存の技術が発達して年中同じ野菜が食べられるようになった昨今だが、やはり旬の味にはかなわない。「さつまいもあなめでたさや飽くまでは」林翔。普段は食べたいとも思わないさつまいもも、旬の濃厚な味わいのものを口にするとおいしくてどんどん食べてしまう
▼果物では桃やブドウや梨。最近は値段が高くて気軽に手は出せないものの、新鮮な甘みが滋養となって体に広がっていく感じはたまらない。去年の9月、国際宇宙ステーションに新鮮な野菜や果物4種類が届けられた。それは北海道のタマネギ、愛媛と佐賀の温州ミカン、宮城のパプリカ、岡山のブドウ。いずれも秋から冬にかけて旬を迎えるものだ。日本の無人補給機「こうのとり7号」によって運ばれたという
▼宇宙飛行士たちは大喜びだったそうだ。これらが選ばれたのには理由がある。4週間以上の常温保存が可能で生でも食べられ、残りかすが少なく果汁などが飛び散らない。『植物はおいしい』(ちくま新書)に教えられた。何より健康にいい。タマネギの抗酸化物質ケルセチンは血液をサラサラにし、ミカンのミネラルやビタミンは体調管理に役立つ。パプリカは動脈硬化や心筋梗塞を防ぎ、ブドウは手軽に糖分と水分の補給ができる上に栄養も豊富だ
▼狭い空間で長期間過ごさねばならず、十分に運動もできない宇宙飛行士にとってはまさに天の恵みだろう。これから長い冬を迎え、活動が大きく制限される道民も似たような状況ではないか。われわれも今のうちに旬の野菜と果物で体を整え、厳しい寒さに備えたい。